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アンダーグラウンド 読後感想

村上春樹著、アンダーグラウンド(講談社文庫)読了。

本書は1997年に刊行されたもので、地下鉄サリン事件の被害者のインタビューをまとめた村上春樹によるルポルタージュである。
村上春樹にこんな著書があったことを知らなかった。

医療従事者なので、サリンという化学物質による薬物中毒事件は詳しく知りたいという思いがあってもいいはずなのに、これまであまり調べようと思ったことがなかった。
本書の中で、著者村上の考察として興味深いことが指摘されている。曰く、オウム真理教が国政選挙に打って出た時、多くの人は目立って拒絶せず、いわば見たくないもののように向き合ったのではないかという指摘だ。それは生理的な嫌悪感といってもいいかもしれないが、つまりオウムの内面と鏡合わせのような、正常な『こちら側の』人たちの内面(アンダーグラウンドに隠れているもの)を想起させているのではないか・・・ということで、著者は非常に慎重に言葉を選んでいるが、要はオウムの歪んだ内面に同族嫌悪を感じているからということではなかろうか。だから戦うよりも避けることを選ぶ。
この指摘は、カルト宗教の問題をなんとなく避けてきた自分には、鋭く刺さった。確かに、考えるだけで汚染されるような気がして、嫌だった。
しかし、それでは本質を理解することはできないであろう。本質を理解できず、時間ばかりが過ぎたらどうなるか。
無反省のまま世代交代し、同じ過ちを繰り返すのである。

あれほど世間を騒がせたオウム事件とは何だったのか、その本質が政府や公的機関によって十分に研究され、その結果の反省が世間に認識されたようには、到底思えない。
むしろ風化しつつあるとさえ感じる。

このような、喉元過ぎれば熱さを忘れる的な性格が日本の特徴的病理で、身の回りの組織を見てもそれがよくわかる。
国民的問題で言えば、近年では東日本大震災の時に、その前例に位置付けられる阪神淡路大震災の反省が生かされず大混乱に陥ったという形で表出し、この説の真実らしさを支持している。あの時も、司令塔は後手後手、現場は必死の努力だった。
福島原発の問題もそう。原発事故は起きないという前提で仕事をしていたのだから論外というレベルかもしれない。
もしこれが、前例が太平洋戦争ということになったら、その反省が生かされないとどうなるのか・・・昨今の公人のレベルの低さ、またマスコミへの不信を思うと、これらの問題の本質を看過した末に待ち受ける悲惨はいかなるものになるか、心配になってくる。
奇しくも本書中のインタビューにあった。日本には、このような大規模災害に迅速に対応するシステムがないのだ、という信州大学病院長の指摘である。この人は松本サリン事件で被害者を受け入れた経験を持つ。すなわち地下鉄サリン事件の『前例』を経験し、その反省によって日本社会の本質的な問題を発見したのだが、社会がその反省を共有しなかった。それは、地下鉄サリン事件から18年経って、東日本大震災の時の社会の右往左往ぶりで証明されたと思うが、どうか。


また、著者の重要な主張として、オウム側の論理ばかりを、正常な『こちら側』の理屈で解剖しても不十分であり、私たち自身の内面を研究することと合わせて、やっとこの事件の本質を理解できるのだ、というものもある。
だから丹念なインタビューが必要で、彼ら被害者たちの言葉の中には、間違いなく『こちら側』の内面が反映される。

実は・・・この本を読んでいて気がついたのだが、異常を来して座り込んだり、倒れたりしてる人々を横目で見つつも、「変だな」と思いながら立ち止まらず、助けようともしなかったことを告白しているインタビュイー(インタビューを受ける人)が、結構いたのである。都会の人はなんて薄情なのか、と一瞬思うのだが、すぐにハッとする。もし自分がその場にいたら、果たして介抱しただろうか、いや、やはり、変だとは思いつつも歩き去ったのではないか・・・と。

オウムはもちろんとんでもないが、我々がイノセントかというと、そうでもないような気がしてくる。
立場が違うと見解が対立するが、落ち着いて考えれば自分たちにも譲るべき余地はあったな、なんて、実社会ではよくそんなことを経験するので、人間何事も相対的に見つめなければいかん、ということはよくわかっているつもりだ。が、このオウムという深刻な事件で生半可な考えを基にそんなことを言えば、社会から袋叩きにあう(本文中で著者もそう言っている)。
しかし、多くの人にインタビューしてみると、『こちら側』の何かが、オウムを産んだように思えてこないか?袋叩きに遭うであろうという予測は、我々がこのような気に入らない意見に正面から戦いたくない何かを持っているという直感から生まれるのではないか?
これが、著者村上が、慎重に慎重を重ねて述べている危惧であると同時に、アンダーグラウンドという書名に込めた意味ではないかと思うのである。





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西南戦争―西郷隆盛と日本最後の内戦 読了

小川原正道 著、『西南戦争―西郷隆盛と日本最後の内戦』(中公新書)、読了。

西南戦争には以前から興味があって、読んでみたかった。本書は丹念に追われた戦闘の展開の描写が白眉だが、自分としてはむしろ、板垣退助や福沢諭吉らがどう影響を受けたかが非常に勉強になった。山県有朋は日本陸軍の祖とされるが、自ら大将としてかかわった西南戦争は一つの画期だったんだろうね。
なおこの本、久しぶりに書店の店頭で購入した書籍であった。





日本人が教えたい新しい世界史 読了

宮脇淳子 著、『日本人が教えたい新しい世界史』(徳間書店)、読了。

すごく読みやすかった。こういうエピソードより歴史観を骨子にした歴史の本大好きだ。
世界の国家はアメリカとフランスだけが特殊という意見を聞いたことがあるが、この本もそれに近いことを言っている。
確かにアメリカは特殊だ。自分の職業から、保険制度についてはかなり特殊だということを知っていたが、それが社会に通底する観念から発達したものであることが良く理解できた。
この著者の夫も著名な歴史学者だそうな。知らなんだ。しかも歴史観という点で真の歴史家と呼べそうな予感。今度読んでみよう。




エセー4 読了

ミシェル・ド・モンテーニュ 著、 宮下志朗 訳、『エセー 4』(白水社)、読了。

この本なかなか読み終わらなかった。毎晩フトンに入って読んでるからだ。最後は腰を入れて読んだ。
ク・セ・ジュという有名な言葉が出てくる。人間の理性、判断力、知識には限界があることを指摘しており、以前読んだ理性の限界という本を思い出した。
エセーは繰り返し読むべきだな。



論語 読了

金谷治 訳注、『論語』(岩波文庫)、読了。

言わずと知れた論語。いつかは全体を通読してみたいと思っていた。
周の時代の礼を重視する孔子の言行録なので、現代にはそぐわないことも多い。それ以外にも、孔子の言葉に他人をそしるような意味合いのものが結構あるのに意外な印象を受けた。名言もあるけどね。
いい機会なので、名言は書き抜いておいた。いつも心にとめておきたい言葉として身近に置くことにしよう。

徳不孤、必有鄰

君子欲訥於言、而敏於行

朝聞道、夕死可矣

學而不思即罔、思而不學即殆

道之以政、齊之以刑、民免而無恥、道之以徳、齊之以禮、有恥且格

剛毅木訥近仁

歳寒、然後知松柏之後彫也

君子恥其言之過共行也






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主にヨンサンを中心に作っています。作ったり作らなかったり、はなはだ不安定な模型ライフですが(^^;;)

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