ここまでわかった 戦国時代の天皇と公家衆たち―天皇制度は存亡の危機だったのか?読了。
本書は、室町後期~江戸期初頭の公家・天皇家の実態について、最新の研究に基づいた知見を一般読者にもわかりやすく解説した書籍である。
この時代について、学校で習う歴史には公家や天皇の存在は極めて希薄であったのは、現実に存在が非力であっただけとは限らず、研究が十分に進んでいなかったからなのだ。このこと自体、素人には意外である。自国の歴史でも、調べられていないことは山ほどあるんだろうねえ。
公家が先祖伝来の役職を専門的に発達させて家業にしていく過程が興味深かった。和歌とか装束とかが紹介されていたが、こういうことに詳しい専門家は時の武門権力者にも重宝されたのである。
信長、秀吉、家康が朝廷から位を授けられるくだりも非常に興味深かった。これまでこういう大名の頂点は朝廷なんか無視してたも同然の態度だったんだろうと、漠然と思っていたのだが、必ずしもそうではなかったらしい。特に家康は、はじめは朝廷との結びつきはほとんどなかったが、最終的には彼らの存続を保護できる存在になるわけで、付き合いが長い。天皇の譲位と皇位継承者選びに関しても、譲ろうという親(天皇)の意向が第一であるという考え方だったようである。関ヶ原の合戦の頃、こんな問題に対してすりあわせがなされていたとは・・・。後の禁中並びに公家諸法度は公家を支配するためというよりも、公家の持つ特殊職能を承認して安定して存続させるという役割や意図もあったらしい。これも非常に面白い。
室町時代は、自分の中では暗黒時代のようで、とても興味をそそる。最近後南朝についての本も読んだが、南北朝が合体を果たしたその後、南朝方はどうなったのか。彼らも人間なんだから、そこでジ・エンドではなく、当然その後の人生があった。こういうところは今までほとんど気にしたことがなく、なぜ疑問に思わないのか、空恐ろしくさえある。そこにはその時代に特異的だった事情のもとに様々な忘れ去られた出来事があり、その時その時で人々が真剣に生きていた形跡があるのだ。この時代だって、現代と同じように複雑で、とても「戦乱に明け暮れていた」などと一言で片づけられない。そのありようを教えられると、現代と地続きである感じがするのである。
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