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古代ローマの女性たち 読了

ギイ・アシャール 著、西村昌洋 訳、古代ローマの女性たち (文庫クセジュ)読了。

古代ローマといっても、王政期と共和政期、さらに帝政期では、女性の立場はかなり違うらしい。
最も古い王政期の女性たちは、敬意をもって尊重される一方で、非常に制限の多い立場を強いられていたようだ。そこには自分の力で物事を決めていくような態度は求められないし、女性たちも望まなかった。市民身分の男性は政治と戦争という家の外で役割を果たし、一方女性は主婦として一家の家政を安定して運営するという分担が明確になされていた。
しかしローマが周辺地域との戦争に勝利することによって、家事の多くを奴隷に任せることができるようになると、女性たちは次第に社会に影響をおよぼす実力・行動力を身につけてゆき、やがてネロの母親であるアグリッピナのような野心家まで現れるようになった。
古い時代には、人口を確実なものとするために結婚は非常に厳格で、離婚はほとんど見られなかったようだが、これもローマ市民以外の隷属身分の労働人口が増えてくるにつれて、次第に弛緩したものとなり、カエサルやアウグストゥスの時代には結婚と離婚を繰り返すものもあらわれ、貞操の観念などどこ吹く風といわんばかりの乱脈も見られたという。
その一方で、伝統的な慎ましい人生態度でもって、与えられた役割を従順に果たした女性もいたに違いないが、そうした人たちの姿は新奇・奇異ではないため、文筆家たちのモチーフにならなかったのではないかと考えられている。

文字を持った民族というのは、はるかな後世から往時のありようをうかがい知れる資料を遺してくれる。ローマ期のラテン語文書というのは膨大な量が残されているのだろうね。
この古代ローマの女性たちのイメージの変遷は、日本女性が戦後解放されて変化していくありさまと、オーバーラップして見えるところがある。こうしたところに人間社会の普遍性があるのではないかと思いを巡らすのは楽しいものだ。反対に全く異なる点を発見することもあり、そこからその後の独特な文化や歴史の成り立ちを見て取ったりするのも楽しい。
そういう意味で、大変面白い本だった。





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剣と清貧のヨーロッパ 読了

佐藤彰一 著、剣と清貧のヨーロッパ - 中世の騎士修道会と托鉢修道会 (中公新書) 読了。

ちょっと時間がかかってしまった(^^;)
最終章のベギン派についての記述が興味深かった。これは知らなかったなぁ。こんな人たちいたんだ。
教会の教えはそれとして、自分の内省・個人が神と向き合うということからプロテスタンティズムが現れてくるのだが、托鉢修道会やベギン派といった人たちがその先駆者とみなせるという見方には、軽い衝撃を受けた。
プロテスタントは教条的なカトリック教会(とその堕落)に抗議するっていうのが出発点だと思っていたけど、個人と神の対話という概念に目覚めた人たちが、静かにキリスト教世界の中で存在感を増していっていたんだね。

後から見ると劇的な変化に見えるけど、実は水面下ではゆっくりと変化が起きているものだ。
その変化は一つ一つは何気ないことで、日常的には気に留められずに通り過ぎるけど、いつの間にか大きな積み重ねになっている。
明治維新後の社会も突然始まったわけじゃないんだよね。
今歴史としてみると、明治維新という画期的な出来事のせいで大転換があったことがわかるけど、当時は江戸末期から連続した時代だったわけだから、いつ変わるとも知れない過渡期を過ごしていたんだろうな。
考えさせられる。





ギリシア悲劇(1) アイスキュロス 読了

アイスキュロス 著、高津春繁 訳、ギリシア悲劇(1) アイスキュロス (ちくま文庫) 読了。

古代ギリシア人たちの世界では、神々が人間世界の出来事に干渉することが多い。そうやって、人間が神の意向に支配されていることを自覚したんだろう。
一番最初のプロメテウスの話が印象に残った。







がん‐4000年の歴史‐ 読了

シッダールタ ムカジー 著、田中文 訳、がん‐4000年の歴史‐ 上・下 (ハヤカワ文庫NF) 読了。

文庫本だったけど、上下巻800ページの大部の書籍で、1ヵ月弱かかってようやく読了。
うーん、すごい本だ。がんという疾患に対して人間たちがどう立ち向かったかの歴史をつづったもので、医療従事者であれば非常に興味深く読めるだろう。がんの歴史と言っても、近代以前にがんを記述した資料は少ないので、本文の内容の大半は近代以降のことだけどね。しかも半分以上20世紀以降のできごと。それは結構知ってるんで、もっと昔の知らない時代のことを読みたかったけど、しょうがないか。

欧米の文学作品らしいもったいぶった修辞がとても多く、いつもは科学論文の淡々とした調子の文章で読みなれているテーマだけに、ちょっと鼻につくかな。言い回しがくどい。だがそんなことが欠点と思えなくなるくらい、俯瞰的な視点によるストーリー性がすごいわ。人間の歴史は事実を時系列に並べただけのものではない。そこには、そのような経緯が形作られた理由があり、その理由には人間の思いが練りこまれているのである。だから歴史は「物語」なのだと思う。

がんとの闘いも科学のあゆみのひとつであり、その歴史にはストーリーがある。昨今話題のオプジーボは、唐突に出てきたわけではない。他の無数の試行錯誤、知識を紡ぎあげた歴史の上に現れた産物なのである。もちろん科学者はそのことを知っている。『科学者は歴史学者と同じくらい熱心に歴史を研究する』(本書より)。先行研究を熟知することは研究者として当然の心構えなのだから。
だが、それでも自分の研究がどのような歴史に立脚しているかを深く認識している人は必ずしも多くあるまい。いわんや、サイエンスではなく人間社会という側面までを包括した歴史を認識している研究者は。だからこそ、学者と社会との間には、しばしば考え方の深刻な相違が指摘されるのである。

本書が世に出て絶賛されるという事実がそれを物語っている。
昔のがん治療はどうだったのか、がんに侵された昔の患者はどのような運命に置かれたのか、そして社会はそれをどう取り巻いたか。そうしたことに我々が無知であるがゆえに、本書によって目を開かれたように感じるのであろう。

自分は薬剤師なので、本文中に出てくる用語・薬品・人名にはよく知っているものが多く、それらは初め固有名詞を伏せられていても、読み進めている間に、「あ、あれのことじゃない!?」と推理ができ、それが的中することがしばしばあった。例えばメトトレキセートであったりグリベックであったり、Her2であったりHIVであったり、ピロリのウォレンとマーシャルだったり・・・。わかるのだ。来るぞ、来るぞ・・・てな感じで。そして、やがてそれが本文中で明かされ、小説でも読むかのように前後関係がつながっていくのは、何とも快感であった。

自分も、科学史としては知っていても、これらが登場した当時の時代背景や社会と重ね合わせて理解するという姿勢は、乏しかったと言わざるを得ない。
印象に残ったことはたくさんある。
戦後のアメリカで勃興したラスカライツの熱狂は、正義を声高に唱えることの意味を物語っているように思える。国家が全力を投入すればがんという絶対悪との戦いに勝てる、そうした絶対に正しいように見える信念は、皮肉にもがん戦争のとるべき道を見誤らせ、現実にはこれだけではがんを撲滅することができず、あまつさえ袋小路に陥った。この構図は何やら、利潤を追求することを正義として邁進した結果、悲劇を招いたサブプライムローンの事件を思い出させる。あるいはイデオロギーの正義を国是として迷宮に入り込んだベトナム戦争と比肩できまいか。
また、社会に害を及ぼしている事実を内心自覚(!)しながら、詭弁を弄し社会を偽り続けたたばこ産業の、おぞましいまでの自己中心的な態度。これの類例は残存農薬問題、温室ガス規制への抵抗、そして昨今の銃規制の問題・・・と、挙げだすときりがない。その意味で、たばこ産業を衰退に追いやった歴史は何か象徴的ですらあると感じる。また、これらの問題には相似が見られる一方で、独特の側面もあることが、さらに興味深い。どこまでも思索を深めることができそうだ。

とにかく面白かった。がんは敵だと思っていたら、実は進化した身内だった、というSF映画みたいなストーリー展開は、あながち的外れではない。がんを乗り越えるということは、我々自身を乗り越えるということなのかもしれない。そんな哲学的、ある意味中二病的感想を抱けるのも楽しいね。





生きていく民俗 読了

宮本 常一 著、生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫) 読了。

義務教育では、このような社会史をもっと取り上げて、祖先のどのような生活を基礎にして、今の自分たちの社会があるのかということをもっと教えた方が良いのではないか。
この本はそういったことの重要性を思い起こさせてくれる。







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Author:カトリーヌ
主にヨンサンを中心に作っています。作ったり作らなかったり、はなはだ不安定な模型ライフですが(^^;;)

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